新型肺炎不況が4月に訪れるワケ

NYダウの高騰が止まらない。2月12日の終値では29,551.42円で史上最高値を更新した。 

N Yダウは新型肺炎の被害の深刻化が報じられた1月26日からの5営業日で約3%ほど下げたが、そこからは被害の拡大とは裏腹に急速に値を戻していた。本当に新型肺炎の世界経済への影響は限定的なのだろうか。

「現在、NYダウは連日最高値を更新し、日経平均も回復基調ですが、中国の現状を見れば全く新型肺炎の影響を織り込んでいないと思います」こう言うのは中国と取引のある経営コンサルタントだ。中国では1月25日の春節以降、主要交通網が制限され、人の集まるショッピングモールや多くの従業員が集まる工場や事業所の多くが当局の指導により操業停止になっていた。しかし、ここ数日で徐々に規制は解かれ経済活動が再開し始めていると言う。このまま経済的には何事もなかったように元に戻るのだろうか。

「確かに、ここ数日で徐々に経済活動は戻りつつあります。しかし、戻ると言っても、いきなり全開に戻るわけではなく、徐々にです。完全に元通りになるにはおそらく最低でも1か月はかかります。問題は、ウィルス発生源の武漢だけではなく、中国全土で経済活動が約1か月は停滞していたと言うことです。この部分があまり認識されていないのが問題です。今や世界の工場と言われる中国からの供給が寸断されていたという現実は重く、今後、ストックで回らないような中小零細のサプライヤーで資金繰りに厳しいところでは連鎖倒産などがありえると思います」(前同)

通常、製造業は2か月前後の部品や資材のストックがあるが、それはあと1か月程しか持たず、中国の製造や物流が再開したとしても、輸出には1〜2か月ほど時間がかかり、元通りになるまでには長いタイムラグがある。さらに、世界中から再開した中国に注文が殺到するため、原材料費や物流費の高騰が予想され、価格転嫁が難しい中小零細の中には耐えきれないところが出てくると言うわけだ。


「こうした影響が出始めるのは4月に入って以降だと思います。3月までは在庫でなんとかしのげると思いますが、その後が問題です」(前同)中国への依存度が高い日本の製造業だけではなく、もちろん春節を当て込んだ中国経済への大打撃は必至だ。中国経済で一時的にでも急ブレーキがかかれば、アメリカだけではなく世界経済にも影響する。

「すでにNYダウは材料もないのに不自然に上げ続けており、バブルの領域で、いつ弾けてもおかしくない。その導火線が新型肺炎になるかもしれない。中国当局の統制で見えにくい中国経済の落ち込みが予想以上に深刻であれば、1−3月期のGDPや企業決算に影響し、これらを材料視するダウ暴落をきっかけに世界経済に影響が出る恐れもある」(経済アナリスト)

経済界が能天気でいられるのも今のうちかもしれない。(山場豊信)

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