「シャチを日本に移さないで」 フランスの動物保護団体キャンペーン

フランス国内で飼育されているシャチを日本に移送することに反対するキャンペーンがフランスの動物保護団体などによって行われている。どういうことなのだろうか?

カナダの沿岸保護区への移送を求めて

フランスでは動物保護を強化する新たな動物保護法が2021年に施行され、同法によって水族館等でのイルカやシャチのショーやイルカやシャチと直接触れ合うこと、さらに水槽内での飼育や繁殖が2026年12月1日から禁止されることになった(※1)。このためフランス国内の施設におけるシャチの処遇が注目されているのだ。フランス南部、地中海に面した都市、アンティーブにあるヨーロッパ最大の海洋公園、マリンランドには4頭のシャチがいたが、昨年10月に1頭が死亡し、現在、3頭のシャチが飼育されている。

フランスの動物保護団体、ワン・ヴォイスとアメリカの非営利団体、ホエール・サンクチュアリ・プロジェクトはマリンランドの3頭のシャチを商業展示から引退させてカナダにある沿岸保護区に移送するために協力することで合意、この合意はフランスの司法裁判所が独立した専門家の評価が出るまでマリンランドからシャチを移送することを一時停止するように求めたことやフランス政府が非商業的な解決策を検討する協議に向けた取り組みを開始したことを受けて行われたという。

ホエール・サンクチュアリ・プロジェクトによると、フランスの裁判所はマリンランドのシャチを日本に移送することを一時停止するように求めたとのことであり、また、シャチの商業的な移送に反対するワン・ヴォイスの署名キャンペーンでは「私たちのシャチを日本(または世界の他の場所)ではなく保護区で守ろう」と訴えていて、日本がシャチを搾取するかのような存在になっているのだが、これはどういうことか?

今年6月にオープンする神戸須磨シーワールド

閉園した神戸市民水族園「スマスイ」=2023年5月

神戸市は久元喜造市長が主導する再開発計画の一環として、同市須磨区の市民水族園「スマスイ」を昨年廃園し、新たにリゾートを意識したアミューズメント性の高い神戸須磨シーワールドを今年6月にオープンする予定だ。同事業はフジ・サンケイグループ企業のサンケイビルが代表を務める共同事業体により行われる。サンケイビルは2015年に鴨川シーワールドを所有するグランビスタホテル&リゾートを買収しており、グランビスタホテル&リゾートはサンケイビルの子会社として共同事業体に参画、神戸須磨シーワールドはシャチショーで知られる千葉県鴨川市の鴨川シーワールドの関西版として期待されているのだ。

そこで注目されるのが神戸須磨シーワールドで行われる予定のシャチショーのシャチだ。現在、国内には1つの家系のシャチが鴨川シーワールドと名古屋港水族館に分けて飼育されており、家族の絆が強いシャチをさらに分断することを懸念する声が国内からも出ている。一方で世界的に動物の保護規制は強まっていることから、シャチを新たに入手することは難しい状況だ。そうした中、シャチの施設での飼育が事実上、禁止されたフランスにおいて、マリンランドのシャチが神戸に移送されるのではないかとの観測がかねてよりあり、「日本にシャチを送らないで」というキャンペーンが展開されているのだ。

ちなみに神戸須磨シーワールドはシャチの入手に関してどのように説明しているのだろうか? 実は神戸市もサンケイビルを代表とする共同事業体もこれまで何も正式には明らかにしていない。動物保護団体PEACEの簡易投稿サイトX(旧ツイッター)の投稿によると、今年1月に神戸須磨シーワールド開業準備室に問い合わせたところ、検討中との回答だったという。開業が迫る中、シャチショーを目玉に掲げる神戸須磨シーワールドがシャチをどこから連れてこようとしているのか依然として不明なのだ。

※1 「フランスにおける動物保護に関する法律の改正」国立国会図書館調査及び立法考査局海外立法情報課 奈良詩織(2022年9月)

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