目指すはモントレーべイ?!  清水港に建設される新たな「水族館」とは

静岡市が清水港で建設を進めている新たな「水族館」。従来の水族館とは異なるミュージアムを目指しているという。関係者によると目標にしているのは米カリフォルニア州のモントレーベイ水族館だ。

国際海洋文化拠点のシンボル

三保半島の付け根に位置する清水港は、背後に標高3776メートルの日本一高い富士山が、眼前には深さ2500メートルの深海を有する駿河湾を臨む地形の中にある。冷凍マグロの水揚げ日本一の港として知られ、また、コンテナ貨物を取り扱う物流の拠点となっている港だが、最近はクルーズ船が寄港するなど海外からの観光客誘致にも積極的だ。さらに駿河湾はJAMSTEC(海洋研究開発機構)の有人潜水調査船「しんかい6500」の活動フィールドになっており、三保には東海大学海洋学部があることから清水港一帯は海洋調査・研究の拠点にもなっている。

静岡市は国際海洋文化都市構想を掲げ、清水港周辺を海洋文化拠点とする新たな街づくり計画を策定、「水族館」はそれら構想のシンボル的な存在として建設が予定されている。市は倉庫や駐車場として使われていた静岡市清水区日の出町の土地約1万平方メートルを既存施設の移転補償も含め約4億円で取得し建設用地とするとともに、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)方式で事業者を公募し、乃村工藝社(東京都港区)を代表企業とする地元企業が参加する計9社の事業グループが水族館の建設・運営を担うことになった。市によると水族館の設計・建設費として約94億円、15年間の運営維持費と合わせた総事業費は約242億5700万円にのぼる見込みで、総事業費の70%となる169億7000万円を市が支出し、他は入館料等で賄う予定だという。

デジタルで海への意識を変える

静岡市制作のポスター。「海のミュージアム」とある

事業そのものは9社が出資するSPC(特別目的会社)である株式会社静岡海洋文化ネットワーク(静岡市清水区)が担うが、JAMESTICと東海大学は静岡市と個別に契約を結んで水族館の運営に参加する予定で、市によるとJAMESTICは展示の監修、東海大学は生き物の飼育等を行うという。市は当初、2020年代前半のオープンを目指していたが、コロナ禍に加え、台風被害への対応の責任をとるかたちで市長が退任するなど市政の混乱もあり当初計画より遅れが生じている。また、今春、市長に就任した元静岡県副知事の難波喬司氏は内容の見直しを示唆しており、市担当課によると現状は設計段階にあるという。

全体的なコンセプトとしては、日本一高い富士山と深海のある駿河湾の地形的な特色や成り立ちを地球科学の視点から展示するととともに、深海生物をはじめ駿河湾に生息する生き物を展示して楽しみながら学べるミュージアム的な機能を有する水族館を目指しているようだ。また、難波市長は「デジタルによって海への意識が変わる展示を」と話しているということなので、デジタル技術を駆使した展示が多くなるのかもしれない。

駿河湾の魅力を発信、ショーは行わない

米サンフランシスコのモントレー半島にあるモントレーべイ水族館はカリフォルニア固有の生き物を中心に巨大な水槽に自然そのものの姿を展示し、カリフォルニアの海が満喫できる世界最高峰の水族館として知られている。担当者によるとモントレーベイ水族館が目標ということで、地域の魅力を発信し、学びや研究の拠点となる施設を目指しているようだ。

一方で従来の水族館にありがちなイルカなどの海洋生物によるショーは行わないという。ヨーロッパを中心に動物愛護の高まりから動物園や水族館のショーを禁止するケースが増えており、また、日本国内でも動物愛護を求める声は日増しに高まっている。新しく建設される水族館には欧米をはじめ海外からの来日客も多く見込んでいることから、ショーはマイナス効果との判断があるようだ。清水港に誕生する新たな「水族館」は2026年にオープンする予定だという。

(編集部)

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