【アジアの中の日本】ミャンマー民主化の灯を消すな 在日ミャンマー人ら活動

2021年2月の軍事クーデターから2年以上が過ぎたミャンマー。軍はアウンサンスーチー氏の身柄を拘束し、政権を掌握。民主化を切望するミャンマー人の多くが国軍により虐殺された。2年を経てミャンマーの状況を伝えるメディア報道は減りつつあるが、今日も多くのミャンマー人たちは民主化を求めて戦っている。ミャンマー民主化の灯を日本国内で支える人たちを取材した。

 (佐々木浩)

「今も国軍の弾圧で苦しんでいる人がいます」

在日ミャンマー人団体による民主化支援活動の様子=JR静岡駅前

多くの人が行きかう駅につながる通路で大きな声が響いていた。「ミャンマー軍によって被害を受けた方への募金をお願いします!」―声の主は在日ミャンマー人団体の代表、ミョー・タン・ゾーさんとその支援者たちだ。ミョーさんは来日して12年、現在は日本国内で仕事をして生計を立てている。2年前に祖国の軍事クーデターを目の当たりにし、ミャンマーの状況を日本の人たちに知ってもらいたいとの思いから在日ミャンマー人団体を仲間とともに立ち上げた。「日本ではミャンマーの現地の様子について、ほとんど報道されませんが、ミャンマーでは現在も軍事政権による弾圧で苦しんでいる人たちがいます。このことを日本の人たちはもっと知ってほしい」と話す。現地の様子を伝えるビラを配ったり、ミャンマー軍によって被害を受けた人たちや、民主派勢力が樹立した「国民統一政府(NUG)」を支援するための募金活動などを行っている。ミョーさんらグループの活動は「Shizu Youth for Myanmar (静ユースフォーミャンマー)」で確認することができる。

募金してくれた人にお礼として手渡される紙バンド製の手作りストラップ「ミャンマー星☆」

「無関心でいることがもっとも悲しいこと」

ミャンマーの民主化を支援する取り組みを行っているのは在日ミャンマー人だけではない。この日のミョーさんらの活動には、静ユースを支援する市民団体「ミャンマーの明日を考える会」のメンバーやFacebookグループ「ミャンマーの今を伝える会2」の藤田哲朗さんら、日本人支援者達の姿があった。その中の一人、田中裕子さん(人道支援有志「ミャンマー星☆」代表)はミャンマー人留学生をフレンドシップファミリーとして受け入れて面倒を見ているという。「ともに食事をして家族のような関係です。『コロナが収まったら、一緒にミャンマーに行きたいね』などと話していました」。しかし、軍事クーデターによって一変。ミャンマーにいる家族への心配が尽きない留学生の姿を見てミャンマーの問題が、他人事ではなく「自分事」になったという。「ミャンマー星☆」と名付けたミャンマー国旗で彩った星形の手作りストラップを、ミャンマー人留学生らとともにこれまでに8,000個以上手作りし、配布する活動に取り組んでいる。「ミャンマーの現状に無関心でいることが最も悲しいことだと思います。ミャンマー星☆が関心を抱くきっかけになってくれたら嬉しい」と話した。

「日本のODAは国軍を支援している」

Facebookグループ「ミャンマーの今を伝える会2」

Facebookグループ「ミャンマーの今を伝える会2」管理人の藤田さんはシンガポールで働いていた時にミャンマー人女性と知り合い結婚。現在は夫婦で日本暮らしをしている。「クーデター発生直後、妻を通じて、ミャンマーの悲惨な状況に関する情報が入ってきました。これを僕1人が知っていても仕方がない、多くの人に知ってもらわないといけないと思いました」と話す。生々しい写真を発信し続けたことで、ミャンマーに住む日本人が管理するFacebookグループから締め出されてしまったが、そのことをきっかけに自らFacebookのグループ「ミャンマーの今を伝える会」を立ち上げた。しかし、同グループも生々しい写真を多く投稿したためFacebookから凍結されてしまった。しかし、藤田さんは諦めることなく再びFacebookグループ「ミャンマーの今を伝える会2」を立ち上げ、管理人としてミャンマーの現状を発信し続けている。

「僕のところには常に、“ミャンマーテロ軍”による悲惨なニュースが入ってくるため、事件が風化したとは感じていない」と言う藤田さん。「自民党や旧民主党の政治家には“ミャンマーテロ軍”と関係の深い人が複数いるため、日本のメディアはビジネス上の関係を優先して忖度しているのではないか?」とミャンマー報道に疑問を投げかける。「日本政府によるミャンマーへのODA(政府開発援助)は間接的に“ミャンマーテロ軍”を支援している」と話す藤田さん。「ジャニーズ問題がそうだったように、海外メディアが事件を報じ、海外から『おかしいよね』という声が挙がらなければ、日本のメディアも政府も動かないと感じている」と話した。

【ミャンマークーデター】ミャンマーでは2020年11月の総選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主党(NLD)が圧勝する一方、国軍系野党の連邦団結発展党(USDP)が敗北、国軍は選挙に不正があったとしてアウンサンスーチー政権との対立を激化させ、ミン・アウン・フライン総司令官のもと2021年2月1日に軍事クーデターを決起しウィンミン大統領やアウンサンスーチー国家顧問、NLD幹部らを拘束し軍の力によって権力を奪取した。これに対し民主派勢力は国民統一政府(NUG)を組織して対抗しているが国軍による弾圧で死者は3,700人を超え、政治犯として拘束されている人は1万9,000人にのぼっている。軍による弾圧は今なお続いており、ミャンマー北西部のザガイン管区を中心に空爆が続けられ、国内で180万人以上の避難民が発生、支援が必要な状況にある。日本政府はクーデターから2年となった今年2月1日、「今なお暴力によって多くの死傷者が発生している状況を強く非難する」とした外務大臣談話を発表、ミャンマー国軍に対し暴力の即時停止や被拘束者の解放などを求めている。

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