台湾海峡で高まる懸念

秋以降、日本の安全保障環境がいっそう厳しさを増している。

台湾海峡を巡る動向では、防衛当局や有識者の間から懸念の声が相次いで聞かれる。トランプ政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたハーバート・マクマスター氏は10月4日、所属するハドソン研究所での演説で、中国軍による台湾侵攻の恐れについて、来年2月の北京冬季五輪終了後に危険な時期に入るだろうと懸念を示し、ロシアが2014年のソチ冬季五輪後にクリミア半島の併合に踏み切ったように、中国も北京五輪後に台湾への威嚇をさらにエスカレートさせる恐れがあると言及した。

10月6日には台湾国防部の邱国正部長が立法院の会合の席で、「2025年には中国が台湾を全面的に侵略することが可能になる」として、中国への警戒感と台湾の軍備を強化する必要性を訴えた。同様に今年3月にも、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は、上院軍事委員会の公聴会で、6年以内に中国が台湾に進攻する可能性があり、インド太平洋で米中の軍事力逆転が生じ、中国優位の環境が予想より早く到来する恐れがあると指摘した。

 日本の政府当局では、「関係者の大多数の危険レベルのフェーズが一段階上がった」(関係者)という状況だ。中国があからさまに台湾へ軍事的進攻を試みる可能性は低いが、米中の軍事バランスが大きく変化している状況においては、中台間で緊張がいっそう高まり、偶発的な衝突によって情勢が一気に緊迫化する可能性は排除できないという見方も当局では強まっているという。

 仮に台湾有事となれば、それは日本の安全保障に直結する問題だ。専門会の間では、「台湾有事となれば必ず米軍が関与することになる。しかし、その米軍はグアムから出るのではなく沖縄本島から出発することになるので、中国が沖縄への軍事的威嚇を強化する恐れがある」との意見が多く聞かれる。台湾有事と日本の安全保障は切っても切れない関係なのだ。

北東方面も危ない

 昨今では、北東方面でも大きな動きが見られる。10月18日には、北海道の奥尻島南西およそ110キロの日本海で、中国海軍とロシア海軍の艦艇合わせて10隻が航行し、津軽海峡を通過して太平洋に向かったことが確認された。防衛省によると、同10隻のうち、中国軍は最新鋭のレンハイ級ミサイル駆逐艦など5隻、ロシア海軍は駆逐艦など5隻だったというが、両国海軍が同時に津軽海峡を通過するのは今回が初めてだという。また、両国は10月14日から4日間の日程で極東ウラジオストク沖の日本海で合同軍事演習を実施した。同軍事演習では戦闘機による射撃や潜水艦による探査などが訓練として実施されたというが、ロシア海軍は他にも10月に入って2回日本海で軍事訓練を行っている。

 一連の動きについて、ロシアはその意図を明らかにしていない。しかし、インド太平洋でクアッドやオーカスなど欧米主導の協力体制が強化されるなか、それをけん制する意図があったことは間違いないだろう。中国だけでなく、ロシアも、欧州やオーストラリアが台湾海峡周辺で軍事的なプレゼンスを強化することを懸念している。

 ロシアにとって、北方領土は北太平洋での、ウラジオストクは日本海での影響力を維持・拡大する上で極めて重要な要衝となる。そして、ロシアの海は冬になると凍るところが多く、北方領土やウラジオストク周辺の海域は冬でも軍事演習が可能かつ漁業資源が豊富であることから、プーチン政権は是が非でもロシアの勢力圏を確保したい。そして、近年は中国が北極海への関与を強めており、日本海は必然的にその北極シーレーンとなる。地球温暖化によって北極の海氷面積がますます縮小する中では、中国の北極進出はますます加速するだろう。しかし、それは同時に日本海の安全保障環境が変化することを意味し、我々は南西方面だけでなく、北東方面への意識も強める必要がある。

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