タリバンが実権を握った背景とは

アフガニスタンの反政府勢力タリバンが8月15日、首都カブールを制圧し、大統領府をタリバン戦闘員らが占拠した。バイデン大統領の米軍撤退発表を待ってましたと言わんばかりにタリバンは国内各地の都市を掌握し、カブールの実権を握るまで短期間だった。では、なぜ再び権力を掌握できたのか。これにはいくつかの理由が考えられる。

アフガニスタンはこれまで中央集権的に国家運営がなされた歴史はほとんどなく、パシュトゥン、タジク、ハザラ、ウズベクなどのように異なる民族からなる多民族国家であり、文化や伝統などが民族によって大きく異なる。よってアフガニスタン政府ができたからといっても、一部の民族に利権が偏っていれば他の民族はよく思わない。

9.11テロ後のアフガニスタン政府内では汚職が蔓延し、それに不満を持つ国民はどんどん増えていった。そのような中、タリバンはそこを突くように地元民たちに接近し、支持を獲得していった。タリバンを構成するのはパシュトゥン人だが、パシュトゥン人はアフガニスタン人口の4割を占める最大勢力だ。タリバンはテロ組織、恐怖政治を行う団体にように映るが、地元民からの支持を拡大するため、医療や食糧支援なども積極的に行っているのだ。

たとえば、昨年以降のコロナ禍でも、タリバンは支配地域の住民たちに感染対策や検査などを積極的に行ってきた。 また、上述したように政府や軍幹部内では長年汚職が絶えず、それに不満を持つ国民も多くいた。兵士の間でも汚職が絶えず、士気の低下で脱走兵も多かったという。軍は定員を名目上は定めているというが、実際何人いるか正確な人数は分からず、名前があるだけで実際はいない兵士の給与を幹部が横領することもあった。米国も実際何人の兵士がいるか分からなかったという。バイデン大統領が米軍の完全撤退を発表し、タリバンの攻勢が一気に強まってから、タジキスタンに逃げる兵士やタリバンが来ることを恐れ先に逃亡した兵士も見られるなど、軍内部の汚職や兵士の士気低下は極めて大きな要因だろう。

さらに、アフガニスタンが抱える深刻な人道問題も影響している。アフガニスタンでは国民の3分の1が飢餓に直面しているというが、識字率の低さが大きな問題となっている。15歳以上の識字率が34%という深刻な数字もある。これを今回のタリバンの権力奪還という問題と関連づけると、アフガニスタン軍を支援する米軍の中では、兵士たちの読み書き能力が低く、軍事的アドバイスを十分に行えないという問題があったという。タリバンの実権奪還にはアフガニスタン国内のさまざまな要因が関係している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA