コロナ禍で落ち込む鉄道需要 一方でサテライトオフィスが拡大中

コロナ禍で働き方が変わり、リモートワークが当たり前の世の中になりつつある。そんな中、個室タイプなどの簡易なサテライトオフィスが都市圏を中心に拡大している。リモートワークが浸透すればするほどオフィスに電車で通勤する機会は減り、通勤の足となってきた鉄道各社にとっては大きな痛手となることは確実。サテライトオフィス拡大の背景には新たな時代を見据えた鉄道各社のビジネス戦略も絡んでいるようだ。(トップ写真はイメージ)

コロナ感染症による影響で鉄道利用は大きく落ち込んでおり、JR各社はいずれも過去最大の赤字となるなど厳しい状況が続いている。都市圏の私鉄各社も軒並み業績が低迷しており、東京都の新宿と神奈川県の小田原を結ぶ小田急線などを運行する小田急電鉄は426億円の赤字見通しが報じられている。その小田急線の代々木上原駅構内に今春、個室タイプのサテライトオフィスが登場した。液晶モニターやWiFi環境を整えた遮音性に配慮したセキュアな個室で、駅構内にて1人で仕事をすることができるというものだ。

ザイマックスが展開しているサテライトオフィス「ZXY(ジザイ)」のウェブサイト

このサテライトオフィスは、不動産事業を手がける株式会社ザイマックス(東京都港区、島田雅文代表)が2018年から展開している「ZXY(ジザイ)」という名称の個室型ワークスペースで、同社はすでに首都圏を中心に今年2月末時点で121のワークスペースを整備、いずれも15分単位の完全従量課金制で法人会員向けだという。「ZXY(ジザイ)」はこれまでも小田急沿線に展開されてきたが、代々木上原駅に今春、開設されたオフィスが他のオフィスとやや異なるのは、ザイマックスが小田急グループ3社(小田急電鉄、小田急不動産、小田急SCディベロップメント)と協定を結んで設置されたオフィスだということだ。協定は2024年3月末までに小田急の駅周辺商業施設等に「ZXY(ジザイ)」を30拠点整備することを目指すとしていて、代々木上原駅に設置された個室型サテライトオフィスはその第1号なのだ。

サテライトオフィスの事業について小田急の担当者は「今回の協定は沿線住民のリモートワークへのニーズの高まりに応じた取り組みで、沿線住民のニーズにこたえるのは鉄道会社の役割。ただ、運営はあくまでもザイマックスで小田急は場所を提供するもの。小田急がサテライトオフィス事業を行うものではありません」と話す。一方、鉄道会社自体がサテライトオフィス事業に直接乗り出しているケースもある。

京王電鉄が運営しているサテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」のウェブサイト

同じく首都圏を走る京王線を運行している京王電鉄は、2018年から京王多摩センター駅近くの京王プラザホテル内でオープンワークスペースやミーティングルームを備えた共有型サテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」を直営している。今春、新たに府中駅と京王八王子駅近くにも「KEIO BIZ PLAZA」を開設、府中と京王八王子ではブース席を中心に京王多摩センターにはなかった個室席も導入するなど、サテライトオフィス事業のさらなる拡大に乗り出している。関西圏でも阪急電鉄、阪神電気鉄道のグループ企業となる阪急阪神不動産が駅周辺のサテライト事業に乗り出しており、4月14日には第1号となるオフィスが千里中央駅近くにオープンする予定だ。

駅構内や駅周辺でのサテライトオフィスの開設に乗り出している鉄道各社。通勤の足を支え、朝夕に通勤ラッシュが繰り広げられてきた日常が、コロナ禍で大きく変化、加速するデジタル社会が働き方を大きく変えようとしている。通勤の足を担ってきた鉄道各社だか、さらに「働く場」をも提供することで事業の多角化を図り苦境を乗り切ろうとしているように見える。今後、こうした事業がさらに拡大していくのか注目したい。

(編集部)

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