伊豆半島の山の上の寺院から廃棄物混入の土砂が流出していた問題、地元の静岡県伊豆市(菊地豊市長)が寺院を訴える訴訟沙汰になっている。市に訴えられたのは宗教法人平和寺本山(静岡県伊豆市大平柿木、大野求美代表)と同法人の元役員ら。伊豆市は被害に伴う損害賠償を請求するとともに廃棄物や土砂を市の所有地や寺院敷地から撤去するよう求めている。
この問題は伊豆半島西部の達磨山近くの山の上にある宗教法人平和寺本山の敷地より大量の廃棄物混じりの土砂が隣接する山地や河川に流出していたもので、昨年6月に発覚し静岡県や地元の伊豆市が調査を行っていた。訴状によると、流出した廃棄物混じりの土砂は2200㎥におよんでおり、寺院の敷地内にはなお7000㎥を超える土砂が残っているという。
訴状によると、これらの土砂は宗教法人平和寺本山の元役員ら2人が政治結社代表を名乗る地元の男性に寺院敷地の造成工事を依頼したことにより昨年2月頃より持ち込まれ、元役員ら2人は土砂に廃棄物が混入していることを知りながら黙認していたという。また、この造成工事は宗教法人の責任役員会議で了承されており、宗教法人も認識していたが何も対策をとっていなかった。訴状によると土砂を持ち込んだ地元男性は県の調べに対して廃棄物の持ち込みを否定し「何者かに廃棄物を投棄された」などと説明、これに対して伊豆市は「廃棄物と土砂は混然一体となっており、廃棄物の混入した土砂を投棄している事実は明らか」としている。
宗教法人平和寺本山は昭和54(1979)年に設立され、その目的に「十一面観世音菩薩を本尊として、世界平和の教義をひろめ、原爆犠牲者の慰霊供養儀式、並びに海洋戦没者引揚げ及び供養の行事を行う」ことなどをあげている。宗教法人平和寺本山のウェブサイトに記載されている説明によると、開山は昭和50(1975)年6月で、昭和52(1977)年4月に当時の湯ケ島町長、静岡県道路公社、厚生省、地元公益法人報徳社などの公費で第1期工事を着工、法人を設立した昭和54年には納骨堂が落慶し、観音立像が完成したと記されている。
サイパンへの遺骨収集や未帰還軍人軍属供養、韓国朝鮮人犠牲者奉還などに取り組み、近年では東日本大震災追悼法要なども行っていたようだ。平成12(2000)年2月に本堂が消失しており、本堂の再建が喫緊の課題になっているとみられる。焼失した本堂の跡地は更地のままになっていて、廃棄物混じりの土砂はそこに持ち込まれ、柵なども設けていなかったために土砂が山の斜面へと崩れ落ちて河川に流入したとみられる。
宗教法人平和寺本山の責任役員を務めている男性によると、総代が15人おり、うち7人が責任役員だという。訴訟についてこの男性は「どのように対応していくかは顧問弁護士と相談して決めるが、平和寺が被害者であることは間違いないので、そのことは主張していきたい」などと話した。また、「平和寺本山としていくつかのことに取り組もうと計画をしていた矢先にこのようなことが起きてしまった。まずはこの問題を解決して落ち着いたら(信徒らに)状況を説明したいと考えている」などと話した。訴訟は今月末に静岡地裁沼津支部で第1回口頭弁論が開かれる予定。
(編集部)