イルカ、ハニーを「孤独死」させた犬吠埼マリンパークで起きていたこと

 閉館した犬吠埼マリンパークが再開に向けて補修工事に着手する―こんなニュースが流れたのは2019年8月のことだった。それから10カ月の月日が経ったが、この間、補修工事は行われたものの再開の兆しはなく、今春には施設内のプールで1頭だけで飼われていたイルカ、ハニーの「死」が伝えられた。犬吠埼マリンパークでは、この間、何が起きていたのか?

正体不明の中国人?女性オーナー

閉館している犬吠埼マリンパーク=千葉県銚子市

 補修工事のニュースが報じられた約1カ月前、写真週刊誌「FRIDAY」が「犬吠埼マリンパークのイルカ ペンギンが中国に売り飛ばされる¦」との記事を掲載した。空撮した写真を掲載して施設が老朽化していることを伝え、マリンパークを中国人女性が買収し新たなオーナーになったと報じた。記事にはこの中国人女性とともに経営に携わるという男性も登場、「オーナーは、水族館にいるイルカやペンギンを中国に売るつもりなのです」とのコメントを掲載した。

 この中国人とみられる女性は昨年3月に犬吠埼マリンパーク株式会社と富士食品株式会社の代表取締役に就任している。ちなみに犬吠埼マリンパーク株式会社と富士食品株式会社の役員構成はほぼ同じで、新たに就任した中国人とみられる女性以外の役員は旧オーナーと旧オーナーの親族とみられる人たちによってほぼ構成されている。

 新たなオーナーとなった中国人とみられる女性がどのような人物で、どのような経緯で犬吠埼マリンパークのオーナーに就任したのか明らかにされていない。犬吠埼マリンパークに電話をしても電話に出ることはなく、施設の周囲には「関係者以外立ち入り禁止」と記した張り紙が貼りめぐらしてある。旧オーナー宅を訪問すると「取材には一切応じない」といった主旨の紙が入り口に貼ってあった。銚子市観光課に尋ねると「連絡がとれないので市は(犬吠埼マリンパークの)新たな委譲先を把握していません」との回答だった。犬吠埼マリンパークは社会から隔絶した閉ざされた塀の向こう側にあるといった印象だ。

再開に向けた補修工事も代金未払いか

 今、犬吠埼マリンパークを訪れると施設の表と側面は青色に塗装されている。しかし、建物の裏は煤けた肌色のままなので、ニュースになった補修工事が施設の一部で行われたのだとわかる。補修工事を行ったという業者に話しを聞くことができた。「(オーナーの)旦那さんと思われる○○さんから指示を受けて指示通りに工事をしました。奥さんと思われる中国人女性とは1回しか会っていません。日本語を話しますが外国人が話す日本語です。工事は補修と塗装、防水処理をして昨年12月25日に終了しましたが、いまだに工事代金が支払われていません」と言うのだ。

表と側面は青く塗装されているが裏側はかつての肌色のままの犬吠埼マリンパークの建物=千葉県銚子市

 業者が旦那さんではないかという男性は雑誌FRIDAYに登場する男性と同じ人物と思われる。この男性はマリンパークの役員ではないが、マリンパークの経営に関与し補修工事を取り仕切っていたようだ。「オーナーの女性は中国の投資家や水族館関係者に顔が広くイルカの売買も行っていたようです。資金に問題はないと思っていたのですが、施設を改修してテナントも入れて中国から大勢観光客を呼び込むつもりだったのが新型コロナで目論見がはずれたのではないでしょうか?」と業者は話した。

 閉館後の犬吠埼マリンパークの状況を監視してきた動物保護団体「PEACE」によると、ハニ―を飼育していたメインプールの水がなくなっていたり、水位が下がっていたことがあったようだ。同団体の東さち子代表は「4メートルほどしかない浅いプールなのに、最後のころはさらに水位を下げていました。イルカの体長に対して浅すぎ。ただでさえ、狭く小さいプールなのに、さらに活動範囲を奪って、環境を悪化させていたと思います」としている。同団体によると、このプールは海水を取水していて、2017年には台風で取水ができず、ろ過装置も壊れて水が緑色に変色したという。また、プールの電気代がかかることにマリンパークは窮々としていたという情報もある。ハニ―を飼っていたプールの電気代が大きな負担になっていた可能性がある。

保護団体「虐待的状況」、千葉県「問題なし」

 新たな中国人オーナーにより再開に向けて施設の補修工事に乗り出したものの、中国から観光客を呼び込むつもりが新型コロナウィルスの影響で再開のメドも立たなくなり、工事費の支払いもままならない状況に陥ってしまったのではないだろうか? そんな中、年度末最後の日曜日にイルカのハニーは死に、年度末に県への報告や手続きが行われた。そして、新年度早々に「ハニー死亡」が公表されニュースとして報じられたのだ。

 PEACE代表の東氏は、閉館後のハニーの飼育について「単独飼育を長期間続けて虐待的な状況だったと思います。イルカは社会性の高い動物なので、コミュニケーションをする相手もいない状態には問題がありました」としているが、動物愛護管理法にもとづき月に1回、保健所職員が状況を確認していた千葉県は「イルカの飼育状態や死亡した状況に問題はなかった」としていてその認識は大きく異なっている。

現在も飼育されている犬吠埼マリンパークのフンボルトペンギン。中国に売られるとの噂も=千葉県銚子市

 犬吠埼マリンパークには今もなお施設内に50羽前後のフンボルトペンギンが残っているようだが、その実態は犬吠埼マリンパークの内情と同様に不透明だ。太平洋の大海原を目の前にのぞむ小さなプールで2年間にわたり孤独に生き続けたイルカ。残されたプールにはかつて多くの人から愛された水族館の面影はもはやない。廃墟化した施設は地域の荒廃を象徴するシンボルと化しつつある。

                       (三好達也)

7 thoughts on “イルカ、ハニーを「孤独死」させた犬吠埼マリンパークで起きていたこと

  1. 報道していただき本当にありがとうございます。ずっと気にかけていました。このマリンパークって、いったい…。オーナーはもちろんですが、県や海匝保健所、そして銚子市も何ら動いている様子がなく、いつまでこの廃墟を放置しておくつもりでしょうか。
    先月初め、銚子市長と観光課に、マリンパークとなんとか連絡をとって今後のプランやペンギンたちをどうするのか明らかしてほしい、有名な国定公園内にこんな悪評高き廃墟が存続することは決して市にとっていいことではないのではとメールをしましたが、回答はいただいていません。
    また、隣接する「犬吠埼ホテル」にも、マリンパークが貸し出しているペンギンたち5羽が極小の囲いに閉じ込められています。飼育員の方が給餌に毎日来ているそうですが、直行直帰で、ホテルは全く関知してないようです。やはり責任者はマリンパークだということですが…。
    動物たちのひとつひとつの命をビジネスの道具としてしかみてないような人達、あきらめて早く手を引いてほしいです。
    こんなずさんな飼育や経営はここだけではありません、水族館は、動物園もですが、本当に必要なものとは思いません。

  2. 闇は深いですね~あいかわらず
    ハニーは敷地内に埋葬されてます。
    現在犬吠埼マリンパークは電気代滞納中です。
    売れる魚を売りさばいてやりくりしてます。

    1. 銚子市観光商工課から6/10に最近の情報として(明確な日付は不明)以下の回答をいただきました。ありがとうございました。

       ・ペンギンの状況について、千葉県に確認したところ、飼育管理に問題はないとのこと。
      ・新社長は中国の方で現在新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で日本に来られない状況のため再開については未定とのこと。
       ・今後における水族館再開のご報告は、事業者から報道発表などしていただけるよう働きかけしていく。→ ぜひお願いします。

      ペンギンたちが1日も早くより良い環境へ移されること、また、ある日突然姿を消すなどといったことがないように切に願っています。

  3. 「平林くん」さま

    エグるニュースさんの取材によると、
    ハニ―の死体はシートにくるまれていた状態で保健所職員が実際にハニ―の死体を確認したかどうか不明。保健所はマリンパークがどのように処理したのかも把握していないようだとのことですが、
    「ハニーは敷地内に埋葬されてます」と明言されているのは、大変失礼ですが、事実でしょうか。その情報はどちらから得られましたか。

    教えていただけますと幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    1. 鎌田 久美子様
      私は銚子市在住で自宅は犬吠埼マリンパークから5分で到着します。
      銚子市観光商工課の担当は林課長補佐でしたか?
      市役所に関して言えばハニーが生きてる時からオーナーにアポを取ることすらできませんしマリンパーク側からは一切関与拒否しています。
      銚子市、千葉県(海匝保健所)彼らはマリンパーク内の出来事は何も知りませんよ。。
      月1回の調査は海匝保健所はただプールサイドから見てるだけ、市役所の人間はだれ一人いません。
      ハニーが死んだ以降PEACEさんが電話でグダグダと保健所の獣医に追及するからのらりくらり回答してるだけです。
      私もPEACEさんのツイート拝見しましたが「はぁ?」ってことだらけです。
      そもそも保健所の担当は海獣医ではないですからね解剖はスタッフがやった方が早いです。
      どこの水族館でもスタッフが解剖することはよくあることです。
      ペンギンは昔からですが朝、昼、夕方とスタッフが餌やりと清掃を毎日休みなく行っています。(365日)
      虐待等の事実はありません。
      マリンパークはこのペンギン達をホテルへリースしてます、これが唯一の収入源です。
      近くにペンギンは中国行くとおもいますね。

      ハニーはどこに?
      敷地内に埋葬してありますよ献花させて頂きました。
      犬吠埼マリンパークの再オープンは無理です。。

  4. 匿名さま
    返信ありがとうございます。銚子市の回答は確認しましたが「秘書広報課 島田様」からのものでした。失礼しました。

    ハニーは確かに敷地内に埋葬されているんですね。考えたくはないですが、少しでも資金調達のため和歌山県などのスーパーに売られたのでは…と疑っていました。

    いったいどれほどの生き物たちが敷地内に眠っているのでしょうか。。。

    ペンギンたちは怠りなく飼育されているとのことですが、あの極小の中に詰め込まれていること自体、虐待です。

    匿名さんは、マリンパークの関係者の方でしょうか、飼育員の方でしょうか。
    また、情報を発信していただければありがたいです。

    ペンギン達の中国売り飛ばしはなんとかやめてほしいです。
    報道機関になるべく早い取材をお願いしようと思います。

    エグるニュースさん、ぜひまた最近の状況を取材していただければ幸いです。

  5. なんと…
    数年前にイルカショーを見に行ったことがあり、ふと思い立ってイルカの消息を検索したところ、イルカが亡くなったとの記事をみて、悲しくなりました。
    中国人オーナーは何がしたいんでしょうか。
    保健所の視察も正しいものでなければ、全く意味がない…
    こんなことがもう起きないよう、生き物の生命を軽視しないで大切にしていきたい…

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