犬吠埼マリンパークはなぜイルカのハニ―を「孤独死」させたのか?

千葉県の犬吠埼にある閉館した水族館、犬吠埼マリンパークで1頭だけで飼育されていたイルカ、ハニ―の「死」が報じられたのは今年4月3日のことだった。小さなプールで2年もの間、飼育されていたこのイルカについては欧米メディアが報じるなど海外からも高い関心が寄せられてきた。ハニ―を思う多くの人たちの声にこたえることなく、なぜ、犬吠埼マリンパークはハニ―を「孤独死」させ、廃墟化した施設内で今もペンギンを飼い続けているのだろうか?

3月末の日曜に死亡し月曜に県に報告

犬吠埼マリンパークのプールで1頭だけで飼育されていたイルカのハニ―=動物保護団体「PEACE」提供

ハニ―の「死」は、今年4月3日に犬吠埼マリンパークを運営する株式会社犬吠埼マリンパークが地元の銚子市役所の記者クラブに発表文を投げ込み、メディアが報じたことで明るみになった。その際、記者会見は行われなかったようだが、市役所を訪れたマリンパークの関係者が銚子市長や観光課の課長などと話しをしたという。銚子市はその際、どのような話しがあったのか明らかにしていない。

千葉県によると、ハニ―が死亡したのは3月29日の日曜日。翌3月30日月曜日に県に報告があり、県は3月31日火曜日に地元の保健所職員が犬吠埼マリンパークに出向いてマリンパーク側への聴取を行ったという。ハニ―の死因は閉塞性腸炎とのことだが、これは犬吠埼マリンパーク側の獣医の死亡診断書にもとづいているようだ。県は保健所職員がマリンパークを聴取した時、ハニ―の死体はまだ埋葬されておらずシートにくるまれていた状態だったとしているが、保健所職員が実際にハニ―の死体を確認しているのかどうか定かでない。都道府県は動物愛護管理法により水族館や動物園に対して指導、監督する立場にある。千葉県によると事業者への指導、監督は動物飼育の範囲にとどまり、死亡した動物の処理については管轄外とのことだ。よって地元保健所は死亡したハニ―の死体を確認しておらず、マリンパークがどのように処理したのかも把握していないようだ。

JAZA「突然、連絡がとれなくなった」

「一昨年の1月に閉鎖した時には犬吠埼マリンパークからイルカやペンギン、魚などの引き取り依頼がありました。動物を移動するには環境省に書類を提出する必要があり、我々で個体確認をし、いつでも移動はOKという状態でした。ところが突然、犬吠埼マリンパークと連絡がとれなくなってしまったのです」―こう話すのは日本動物園水族館協会(JAZA)の関係者だ。

JAZAによると犬吠埼マリンパークはかつてJAZAに加盟していたが、2011(平成23)年6月に退会。理由は経営上の問題とみられる。しかし、閉館時にはイルカやペンギン等の引き取り依頼がJAZAにあり、施設内の動物をJAZA加盟の他の水族館に移す予定だったようだ。ハニ―の問題に取り組んでいた千葉市議は「地元の動物園でも受け入れる意向があった」と話している。動物園や水族館の動物を移動するには移動元と移動先の施設が書類を環境省に提出する必要があり、その準備をJAZAで進めていたという。ところが4月頃から犬吠埼マリンパークと連絡がとれなくなってしまった。3カ月の間に何が起きたのだろうか?

犬吠埼マリンパークが閉館に至ったのは東日本大震災の影響で客足が遠のいたためと言われている。施設は老朽化しており耐震化を迫られていたことも理由と報道されている。

 土地も建物も親会社が所有

犬吠埼マリンパークは、もともとは銚子市の水族館だったようだが、京成電鉄に譲渡され京成傘下のもと1971(昭和46)年に犬吠埼マリンパーク株式会社が設立された。そして、3年後の1974(昭和49)年に現在の犬吠埼マリンパークがオープンした。イルカのショーなどで人気を呼び最盛期には年間30万人もの集客があったという。しかし、1984(昭和59)年に京成電鉄がマリンパークの経営から撤退、事業を継いだのがマリンパークにテナントとして出品していた富士食品株式会社(当時の本社は東京都品川区)だった。犬吠埼マリンパーク株式会社は京成傘下から富士食品の子会社となり水族館の運営はそのまま継続された。

犬吠埼マリンパークのプール全景=動物保護団体「PEACE」提供

水族館事業を引き継いだ富士食品は、1993(平成5)年にマリンパークの全面改修を行い、水族館の建物とは別に新たに3階建ての店舗と食堂用の建物を新築している。また、1998(平成10)年には富士食品の本社所在地を東京都品川区から銚子市犬吠埼のマリンパーク所在地に移転している。マリンパークの建物や土地は一部を除き富士食品が所有し、富士食品はマリンパークの土地や建物を担保に金融機関から多額な資金を得て運営をしていたようだ。

しかし、2002(平成14)年に経営危機が表面化する。富士食品が千葉地裁支部に民事再生法の適用を申請したのだ。2005(平成17)年に再生手続きは終結し、富士食品株式会社、犬吠埼マリンパーク株式会社は今日も法人として存続している。富士食品の再生手続きはどのような形で終結したのだろうか? 一部ではマリンパークの賃貸料収入により20年計画で負債を返済することになったとされている。事業再生がどのような形で進められたのか正確なことは定かでないが、富士食品とマリンパークは実質的に一体となって経営が行われていたと考えられるので、富士食品の経営危機がマリンパークの経営と直結していたことは間違いないだろう。そのマリンパークは2018(平成30)年1月に閉館となり収入が見込めない状況となった。それ以前より、特に2011(平成23)年の震災以降、マリンパークの経営は極めて厳しい状況にあったと言える。

イルカを1頭だけ狭いプールでなぜ飼育しているのか? そんな多くの人が抱く疑問にマリンパークは何も答えてこなかった。なぜ何も言わないのか? そこには2002年以降表面化した経営危機をめぐる様々な問題が横たわっているからではないか? 施設に残されたイルカのハニ―、そしてペンギンたちは、ずさんな経営に巻き込まれた「犠牲者」なのかもしれない。動物園や水族館の経営のあり方、動物園や水族館のあり方そのものが問われている。

 (三好達也)
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