懸賞金や謝礼金が支払われる事件とは?上限額2000万円も

 盗難された恐れのあるリスザルの有力情報に静岡県伊東市の伊豆シャボテン動物公園が100万円の謝礼金を準備していることを以前お伝えした。動物公園によると謝礼金による情報募集は3月末で締め切ったとのこと。しかし、リスザルについては依然として行方不明のままで引き続き情報は求めているという。ところで犯罪の懸賞金というとアメリカ西部開拓時代に登場する賞金稼ぎを連想してしまうが、日本でも2007年4月以降、警察庁によって報奨金制度が運用されている。日本の犯罪懸賞金はどのようなものか?

警察庁・捜査特別報奨金の対象事件は:現在16件

 警察庁によると、正式には捜査特別報奨金と呼び、「広く国民から重要凶悪犯罪等の被疑者検挙に資する情報の提供を受ける」ことを目的としている。すべての事件が報奨金の対象となるわけではなく、警察庁特別手配被疑者にかんする事件や警察庁が重要と認めた事件で、社会的な反響が大きい特異または重要な事件について都道府県警察の長からの申請に基づき警察庁刑事局長が警察庁長官官房審議官(刑事局担当)を委員長とする捜査特別報奨金審査委員会に諮問して決定するという。報奨金の上限は300万円だが1000万円を超えない範囲で増額が可能で、応募期間も原則1年間だが延長や短縮が可能ということだ。

 警察庁はウェブサイトで捜査特別報奨金の対象事件を公開している。現在は表に示した16事件が対象になっている。16事件のうち2件は誘拐事件だ。誘拐事件の1つは大阪府熊取町で平成15年5月20日、当時小学4年生だった吉川友梨さんが下校中に行方不明になった未成年者略取誘拐事件。もう1つは群馬県太田市内のパチンコ店で平成8年7月7日、家族とともに来店した横山ゆかりちゃん(当時4歳)が店内で遊んでいるうちに行方不明になった幼女略取誘拐事件だ。行方不明者の情報のほか目撃情報のあった車両や防犯カメラ映像に映っている男の情報などについてそれぞれ求めている。

 

 捜査特別報奨金の対象になっている誘拐事件以外の14事件はすべて強盗殺人や殺人放火を含む殺人事件だ。14件のうち4件は犯人が特定されて警察庁が重要指名手配をした被疑者に関する情報を求めたものだ。また、5件は犯人の特定には至っていないが似顔絵が作成されていたり、防犯カメラ映像等に映った犯人の姿があり、それらを公開して犯人の情報を求めている。

 他の5件は犯人についての特定情報がなく事件に関するあらゆる情報を求めている。平成7年7月30日に八王子市のスーパーナンペイ大和田店事務所内で女性従業員3人がけん銃で殺害された大和田町スーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件、平成8年9月9日に東京都葛飾区柴又で当時21歳の女子大生が自宅で殺害され放火された柴又三丁目女子大生殺人放火事件、平成12年12月30~31日に東京都世田谷区上祖師谷の会社員宅で家族4人が殺害された上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件、平成20年5月2日に愛知県豊田市で帰宅途中の女子高校生が何者かに襲われて殺害された豊田市生駒町地内における女子高校生強盗殺人事件、平成20年5~6月に琵琶湖でバラバラの遺体が発見された琵琶湖岸におけるバラバラ殺人・死体遺棄事件だ。上祖師谷の一家強盗殺人事件では現場に残されたハンカチの真ん中に約3センチの切り込みがあったことから、ハンカチの使用方法に関する情報も求めている。

別に私的懸賞金や謝礼金も

ハンカチの使い方の情報も求めている上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件のポスター。懸賞金額は上限2000万円

 警察庁が運用する捜査報奨金の対象事件の中には、捜査報奨金のほかに私的懸賞金がついている事件もある。例えば上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件では捜査報奨金300万円に加えて上限を1700万円とする私的懸賞金が付けられていて懸賞金上限額は2000万円にのぼる。また、幼女略取誘拐事件では捜査報奨金とは別に遊技業組合支部内の防犯協力会より300万円を限度とする謝礼金が設定されている。これは被害者がパチンコ店で行方不明になったことから、遊技業界として謝礼金を用意して被害者の発見につながる情報を広く求めているものだ。

 また捜査報奨金の対象になっていなくても有力な情報に懸賞金や謝礼金が支払われる事件もある。平成25年2月に山梨市内の民家で起きた強盗致傷事件は警察庁が被疑者を重要指名手配しているが捜査特別報奨金の対象にはなっていない。しかし、被疑者の検挙に結び付く情報には上限を100万円とする私的謝礼金が地元の警察関係団体を通して支払われる。平成23年2月25日、山梨県甲斐市の国道20号で当時24歳の会社員がひき逃げされ死亡した事件では500万円を上限とする私的謝礼金が支払われる。過失運転致死罪の時効は10年のため、この事件の同罪での立件は時効まで1年を切っている。

 警察庁が運用している捜査特別報奨金は公的懸賞金、他を私的懸賞金と呼んでいるが、いずれも民法の懸賞広告の規定に則っている。私的懸賞金は個人や団体等が行うものだが、犯罪捜査に関わるケースでは警察署と個別に規約を取り決めるなどして行われるのが一般的なようだ。懸賞金は犯人検挙、事件の解決を願う思いのあらわれと言える。各地の警察署には懸賞金のついた事件のポスターが掲示されたりしているので、一度、最寄りの警察署をのぞいてどのような懸賞金事件を扱っているのか確認してみてはいかがだろうか?もしかしたらあなたの記憶の中に事件解決につながる有力な情報が眠っているかもしれない。

(編集部)

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