いまやすっかり影が薄くなった「新聞」。街中はもちろん、電車で広げて読んでいる人すら、ほぼ見かけなくなった。報道閲覧媒体のデジタル化以降、新聞各社の懐事情は厳しいが、ついにタブロイド判の夕刊紙である「夕刊フジ」(産経新聞社発行)の来年1月いっぱいの休刊(事実上の廃刊)が決まった。(山場豊信)
夕刊紙記者が言う。
「新聞各社が厳しいのは変わりませんが、特に夕刊紙は朝刊紙と違って定期購読者による定期収入がほとんどありません。経営基盤がぜい弱で、新聞の即売の減少傾向のあおりをもろに受けやすい。業界はこの20年ほど、毎年1割減が続いていて、スマホの登場で減少スピードが一気に加速し、コロナの在宅ワークでさらに落ち込みました。スポーツ紙や特に即売メインの夕刊紙がむしろ今だに維持できていたことだけでも奇跡ですよ」
夕刊紙は同紙以外にも、同じくタブロイド判の「日刊ゲンダイ」とスポーツ紙である「東スポ」が存在する。今のところ2紙について休刊の情報はなく、夕刊フジの撤退で、むしろ“残存者利益”も見込めそうだが、実は窮地に追い込まれているという。どういうことなのか。
「これは、輸送の問題です。関東と関西では夕刊紙の輸送をこの3社が1つの運送会社に相乗りしていて、1社が抜けると、残り2社で負担することになります。実は日刊ゲンダイはこれまでも輸送費の高騰などで、関西からの撤退を打診してきたことがあり、その都度、東スポと夕刊フジがとりなしていた経緯があると聞いています。しかし、今回は夕刊フジが休刊を決定したことで、輸送費は2社での負担になります。しかも輸送会社も燃油費や人件費の高騰を理由に値上げを要求しているという話もあります。当然、日刊ゲンダイは早々、根を上げることが必至で、そうなるとドミノ倒しのように東スポもヤバくなる。両社の新聞撤退はすでに時間の問題とも言われていて、早ければ26年1~3月あたりに発表があるかも、とみる関係者もいます」(メディア関係者)
この3社の従業員にとっては、もっともヤバいのは東スポだという。
「夕刊フジは親会社の産経新聞が朝刊スポーツ紙であるサンケイスポーツなどに人員を配置転換するので、当面リストラなどはないそうです。日刊ゲンダイもグループ会社の講談社が、救済する話がある。しかし、東スポは独立系なので、それらが厳しく、しかも社員数が200人を超える大所帯です。
現在は、週末の競馬新聞としての需要で、なんとか売上を確保していますが、これが配送の問題などで新聞事業が維持できなくなると、残りはweb部門だけになります。こちらも、広告単価の低いエンタメ記事を主流としていて、200人以上の社員を養うのは無理です。数年以内に東スポも新聞事業から撤退し、社員も50人くらいに減らし、webニュースだけの会社になるかもしれません」
一方、夕刊フジは紙の発行だけでなく、web版のニュースサイト「ZAKZAK」も閉鎖する。大手メディアより、はるかに忖度の少ない記事で、庶民の本音を代弁していた夕刊紙ジャーナリズム。これが無くなることは国民にとっても大きな損失であることは間違いない。