神戸須磨シーワールドのプールに漂う1頭のシャチ、YouTubeにオープン前の空撮映像

シャチのショーを目玉に今年6月に神戸市内にオープン予定の神戸須磨シーワールド。その施設とみられるプールで、1頭だけで漂うように泳いでいるシャチの映像が動画投稿サイトYouTubeに公開された。動画を投稿したのは日本のNGO団体「Life Investigation Agency(LIA)」で、アメリカのNGO団体「Dolphin Project」も名前を連ねている。ドローンによる空撮映像とみられる。

YouTubeに投稿されたステラとみられるシャチ(©Life Investigation Agency)
=https://www.youtube.com/watch?v=CanOlWOEZZA&t=8sより

撮影されたシャチについて、LIAは背ビレの特徴から名古屋港水族館にいたメスのシャチ、ステラの可能性が極めて高いとブログで明らかにしている。ステラはアイスランドの海で捕獲された野生出身のシャチで、2011年に千葉県鴨川市にある鴨川シーワールドから名古屋市の名古屋港水族館が借り受け、以降、名古屋港水族館で飼育されていた。この間、ともに鴨川シーワールドから移送されたオスのシャチ、ビンゴとの間にメスの子供、リンを出産。2014年にビンゴは死亡し、最近は子供のリンと鴨川シーワールド出身のオスの孫、アースとともに過ごしていた。

しかし、名古屋港水族館は今年3月30日、「ステラは所有者である株式会社グランビスタホテル&リゾートへ3月29日にお返ししました」と唐突に発表。名古屋港水族館はステラの移送先を明らかにしなかったが、株式会社グランビスタホテル&リゾートは鴨川シーワールドの運営会社であるとともに、神戸市須磨地区に新たに建設された神戸須磨シーワールドの指定管理者であることから、神戸須磨シーワールドに移送されたとの観測が強まっていた。

神戸市須磨地区にはもともと市立の須磨海浜水族園があり地域の水族館として親しまれていたが、久元喜造市長が掲げる再開発構想により昨年5月に閉園となり、Park-PFIによって神戸市が選定したフジサンケイグループ企業のサンケイビルを代表企業とする共同事業体によって再開発が行われてきた経緯がある。神戸須磨シーワールドは須磨再開発の核となる施設で、サンケイビル子会社のグランビスタホテル&リゾートが指定管理者となって運営しシャチのショーを集客の目玉としている。しかし、世界的に野生のシャチの捕獲が禁止され、アメリカやヨーロッパではシャチのショーが禁止となる趨勢の中で、シャチをどのようにして確保するのかグランビスタホテル&リゾートも神戸市もこれまで何も明らかにしてこなかった。

このため法律によりシャチのショーが禁止されたフランスのシャチが神戸に移送されるのではないかとの観測が広がり、フランスの動物保護団体などによって移送反対キャンペーンが展開されるなどしてきた。また、鴨川シーワールドのシャチの一部が神戸に移送されるのではないかとして鴨川シーワールドのファンから不安視する声もあがっていた。日本ではこれまで名古屋港水族館でステラを含む3頭、鴨川シーワールドで4頭のシャチが飼育されてきたが、それらはステラとその子供と孫で、1つの家系のシャチということになる。シャチは家族の絆が強い動物とされ、野生のシャチは家族で群れを作って行動していることから1家系のシャチを分断して飼育することへの懸念が鴨川シーワールドのファンの間からもあがっていた。しかし、今回、ステラが神戸須磨シーワールドに移送されたことでファンの懸念は現実のものになりつつある。

YouTubeに投稿された動画の説明によると、「観察している間、シャチはただ浮いているだけの時間が長かった。また、頭から壁に向かって泳ぎ、バックし、また頭から壁に向かって泳ぐという行動を繰り返していた」という。動画は4分間で最後にシャチとみられる動物の鳴き声とともに須磨の大海原を映し出すなどメッセージ性の強い内容となっている。神戸須磨シーワールドがシャチ1頭でオープンを迎えるとは考えにくいことから、近く鴨川シーワールドのシャチが神戸に移送されるのではないかとみられている。

One thought on “神戸須磨シーワールドのプールに漂う1頭のシャチ、YouTubeにオープン前の空撮映像

  1. そもそも、海の野生動物であるシャチやイルカを無理やり家族から引き離してつかまえ、人間の娯楽の道具として展示したりショーさせること自体が大きな過ちだと思います。

    人間だけでなく、海の動物も自由に、幸せに、家族と一緒に暮らしたいはずです。その幸せと自由を「水族館が奪っている」ことに気づいてほしいです。

    人間は自由に好きな時に水族館に遊びに行きながら、シャチやイルカや魚を水槽に閉じ込め、水族館デートや、SNSの「映え」で楽しむために海の生き物の自由を奪うのは本当に今すぐやめるべきです。

    水族館とは、海の生き物を苦しめる人間にとっての娯楽施設です。

    海の生き物の気持ちや、どう暮らすのが幸せなのかを考えたり、想像したり、海の生き物たちの本来の幸せを第一に考え、そしてそれを願う視点が完全に水族館には欠落しているところが、本当に致命的な欠陥といえます。

    地震で停電したり、水槽が割れたりすれば、水辺の生き物は瞬く間に命を奪われ、水のない地上で生きていくことはできません。水温管理や水質浄化のために常時多大なエネルギーを消費し続けることも問題です。地球温暖化が激しい今、水族館の運営はもはや運営すべきではないものだと断言します。

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