マイナンバーをめぐる問題で個人情報保護委員会が立ち入り検査を検討していると報道されているデジタル庁。しかし、当の河野太郎デジタル大臣はネットのコンテンツで「マイナンバーを他人に知られたからと言って何か起こるわけではない」と公言してはばからない。マイナンバーの漏えいを看過するようにも捉えられかねない発言だが、河野大臣の認識は正しいのだろうか?
YouTube上に公開されている【デジタル大臣 河野太郎(前編)】という映像コンテンツ。河野太郎デジタル大臣がマイナンバーについて熱く語っている動画だ。マイナンバーが普及すれば「マイナンバーをもっている前提でサービスを組み立てられるようになる」と話し、マイナンバーが行政や民間サービスに大きなメリットをもたらすと説く河野大臣。しかし、そもそも便利な仕組みや魅力的なサービスがあるからこそ普及するのであって、カードが普及すれば便利な仕組みや魅力的なサービスが生まれるという河野大臣の主張は本末転倒、主客逆転なのではないだろうか? インタビュアーから「(マイナンバーカードの)メリットを今後1、2年くらいで皆さんがかなり実感して生活変わったなと思えるようになってくるということですか?」と問われると河野大臣はこう返した。
そうですね。そこがやっぱり大事で『やっぱ便利じゃん』というのと、それからもう1つは、スタートの時に目隠しの袋に入れてお渡ししたものですから、マイナンバーを見せちゃいけないっていう都市伝説が広がってですね、あれって別に見せたからといって何の問題もない。僕がよく言うのはマイナンバーカードとキャッシュカードって同じようなものですと。口座番号を知られたからと言ってそれだけでなんのデメリットもないですよねと
そしてこう続けた。
まぁ、奇特な人がいれば口座番号知られたら、そこに金振り込んでくれる人が、まぁ、いないだろうけど(笑)。マイナンバーも同じでマイナンバーを知られたからと言って何か起こるわけではありません。キャッシュカードもマイナンバーカードも仮に落としても4桁の暗証番号がわからなければ何もできないんで。落としたら電話して止めてください。だからマイナンバーカードはキャッシュカードと同じように大事に扱ってくれればいいです
マイナンバーを他人に知られても大した問題はないと言い、マイナンバーカードはキャッシュカードと同じように扱ってくれればいいという河野大臣。銀行の口座番号を知られたからと言ってなんのデメリットもないと言っているが本当だろうか? 2020年に明るみになったキャッシュレス決済サービスをめぐる事件では、銀行口座をスマホに紐付ける際の認証が不十分だったことからキャッシュレス決済サービスに他人の口座が安易に紐づけられて不正出金され多くの被害が出た。金融庁はキャッシュレス決済サービスを銀行口座に紐付ける際の認証に問題があることを事件が起きるまで把握していなかった。
デジタル空間では流出した様々なデータが蓄積され、それら様々なデータが紐付けされて闇市場に出回ってサイバー犯罪者に売買されたりしている。河野デジタル大臣は口座番号を知られて何も問題は起きないと言ってはばからないが、むしろ口座番号だけでも流出すれば何かが起きるリスクがあるのがデジタル社会だといえる。デジタルは情報を流通させて社会に変革をもたらす一方、新たな犯罪の仕組みを生み、国家間の情報戦を引き起こすなどアナログ社会にはないリスクを増大させているのだ。
暗証番号が知られなければ口座番号を他人に知られても何も問題はないと公言してしまう大臣が日本のデジタル化を先導して大丈夫なのだろうか?と正直、心配になってくる。ちなみに「奇特な人がいれば口座番号知られたら、そこに金振り込んでくれる人が、まぁ、いないだろうけど」と笑ってしまう河野大臣なのだが、それってまさにソーシャル・エンジニアリング、フィッシング詐欺の手口ですよ!
(編集部)