「シャチの親子を引き離さないで」 来年オープン予定の神戸須磨シーワールドに懸念の声

神戸市須磨区に令和6(2024)年6月にオープン予定の水族館「神戸須磨シーワールド」。同水族館に千葉県鴨川市の鴨川シーワールドで飼育されているシャチが移送されるのではないかとの懸念がネットで広がっている。どういうことだろうか?

泳ぐシャチを眺めて食事が出来るレストラン

シャチを見ながら飲食できるレストランの完成予想図=神戸須磨 Parks + Resorts 共同事業体リリースより

神戸須磨シーワールドは、須磨海浜公園エリアの再開発を掲げる神戸市がPark-PFIにより公募し、選定した株式会社サンケイビル(東京都千代田区)を代表とする共同事業体により同公園エリア約10ヘクタールを開発・運営する計画の一環として建設される施設で、総事業費は370億円と報じられている。同エリアにはすでに市立の須磨海浜水族園があるが、再開発により同園は今月31日に閉園し35年間の歴史に幕を閉じる。

新たに建設される神戸須磨シーワールドは、西日本最大級の水族館を目指して建設され、同公園エリアの開発の目玉となる施設。開発エリアにはホテルも建設され、リゾートを意識したアミューズメント性の高い水族館になるものとみられ、イルカやシャチのショーを目玉に、シャチが泳ぐ様子を眺めながら飲食できるレストランも館内に併設するという。共同事業体代表のサンケイビルは2015年、当時、企業再生支援機構により経営再建中だったグランビスタホテル&リゾートを買収、また海洋レジャー施設の鴨川シーワールドは1970年に開業し、その後、運営事業者がグランビスタホテル&リゾートとなり、サンケイビルのグランビスタホテル&リゾートの買収によりサンケイビルの傘下になった経緯がある。

鴨川シーワールドのノウハウや資源を活用

サンケイビルを代表とする共同事業体のメンバー企業には株式会社グランビスタホテル&リゾートも入っており、神戸須磨シーワールドは鴨川シーワールドのノウハウや資源によって運営されるとみられ、2019年の神戸市議会では当時、副市長だった岡口憲義氏(現・一般財団法人神戸観光局副会長)が「事業者のシャチの飼育の実績も踏まえましてシャチの水族館での展示・運用は可能と考えている」などと答弁している。鴨川シーワールドは国内でシャチの飼育やショーを先駆的に行ってきた施設で、シャチの人工繁殖の実績を誇り、現在はラビ―、ララ、ランの姉妹3頭とラビ―の長女、ルーナの計4頭を飼育してショーを披露して多くのファンを惹きつけている。

Change.orgのキャンペーン

しかし、最近、こうしたファンの間で鴨川シーワールドのシャチの一部が来年開業する神戸須磨シーワールドに移送されるのではないかとの懸念が広がっており、インターネット上では鴨川シーワールドのシャチを神戸に移送しないように求める発信が行われている。オンライン署名サイトのChange.orgでは「神戸市とグランビスタホテル&リゾートはシャチの家族を引き離さないで下さい」と題したキャンペーンが行われており、発信者は「シャチはとても家族の絆が強く、子どもは生涯母親と共に暮らす。一度繁殖のために群れを離れても、いずれ母のもとへ戻ってくる」と記し「人間の娯楽や利益のためにシャチの家族をバラバラに引き離すという無情なことをさせないで下さい」と訴えている。

 Youtubeにもシャチの移送を懸念する動画が投稿されており、「人間の都合で家族という群れを引き離すのは反対」「トレーナーさん達の努力を無駄にしないで欲しい」などシャチを移送することに反対するコメントが多く寄せられている。

母親と子供、孫シャチの家族が分断される

こうした背景には、2011年に鴨川シーワールドから3頭のシャチが名古屋港水族館に移送されたことがあるようだ。移送前の鴨川にはアイスランドで捕獲された雄のビンゴと雌のステラ、その子供でいずれも鴨川シーワールドで生まれたラビ―、ララ、ランの3姉妹、そしてアイスランドで捕獲されたラビ―の夫のオスカーとその子供の雄のアースがいたが、2011年にビンゴとステラ、ランの3頭が名古屋港水族館に移送されたのだ。その後、ステラは名古屋港水族館で新たに雌のリンを生み、また、鴨川シーワールドのラビ―も雌のルーナを生んだが、ビンゴとオスカーの雄2頭は亡くなり、現在、日本で飼育されているシャチは雌6頭、雄1頭の計7頭。ステラとその子供と孫が鴨川と名古屋の2つの施設に分かれて飼育されている状況だ。こうした中、神戸でシャチのショーを掲げた水族館が新たに建設されることから、シャチの家族がさらに分断されるとファンは懸念を募らせているのだ。

また、シャチやイルカのショーをめぐっては欧米を中心に根強い批判があり、動物愛護団体が裁判に訴えてショーの廃止に至っているほか、施設のシャチを海に返す取り組みも行われている。神戸須磨シーワールドは、久元喜造市長が主導する神戸市の再開発にもとづき建設されるものだが、地元では長年、スマスイの愛称で親しまれてきた水族園が廃止され、代わりに観光客誘致を目的とした水族館が建設されることに対して不満の声も聞かれる。そうした中、主役となるシャチについての懸念が鴨川シーワールドのファンの間で広がっている状況で、神戸須磨シーワールドがどのようにシャチを確保しようとしているのか気になるところだ。

■参考

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/30416/riri-susiryou.pdf

https://www.kobe-np.co.jp/news/odekake-plus/news/detail.shtml?news/odekake-plus/news/pickup/202201/14979182

https://jp.reuters.com/article/sankei-idJPKBN0NF0Q520150424

https://www.sankei.com/article/20150313-P5HIB35WPJL2NJXIEUDALTKDVQ/

https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0102D_R01C11A2EE2000/

https://www.oricon.co.jp/special/57517/

https://rashiku-like.com/kamogawaseaworid-orca-show-no1/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA