ネットを利用して資金を調達するクラウドファンディング。夢や計画を実現する手段として広く利用されている。最近、あるクラウドファンディングをめぐる報告書がネット上でちょっとした話題になった。クラウドファンディングは実態として利用者が運営会社に利用料を支払うのではなく、支援者の支援金の一部を運営会社が収益化しているのではないだろうか?
「システム利用料が約925万円でなんか言葉がない」
「4000万円以上が集まったこと、678人の全職員へ5万円支給できたことなどがきっちり丁寧に書かれていて感動したんだけど、システム利用料が約925万円でなんか言葉がない」
こんなツイッター上のちょっとした書き込みがネットで波紋を広げた。東京都台東区にある永寿総合病院では昨年3月に新型コロナウィルス感染症のクラスターが発生、コロナにより病院スタッフに十分な給与を支払うことができないほど切迫した事態に追い込まれた。この事態に同病院に勤務経験のある医師らが「永寿総合病院を応援する会」を立ち上げてクラウドファンディングによる支援を呼びかけ、4000人を超える人たちが趣旨に賛同して5000万円近い支援金が集まったという。永寿総合病院がクラウドファンディングで集まったお金を病院スタッフに支給したことはニュースでも報じられた。永寿総合病院を応援する会はクラウドファンディングの報告書を作成し寄付をしてくれたすべての人たちに送付した。上記のツイートは、その報告書を受け取った人のつぶやきだ。
ネット上に出回っている報告書によると、集まった約5000万円のうち計約3400万円がスタッフに支給され、600万円が感染対策費や事務費に、そして残りの1000万円近いお金はシステム利用料としてクラウドファンディングの運営会社に支払われている。病院を助けるために寄付したはずの支援金が運営会社に渡っていることに対する複雑な気持ちが上記ツイートに表れている。ちなみにこの運営会社のクラウドファンディングでは、目標金額に達成した場合のみ利用料が発生し、集まった支援金から利用料を控除した残りの金額がプロジェクトの企画者に支払われるようだ。上記ツイートに対してネット上では「人件費やシステム構築、目に見えないフォロー、事業にするまでとかもろもろ考えると妥当な気がする」「賛同者が多い場合は手数料率が逓減されるような設計にするべき」「これもまたビジネスなんだな」など様々な意見が寄せられた。システム利用料の料率は運営会社により異なり、国内の運営会社の利用料の割合は海外と比べて総じて高いとの指摘もあった。しかし、そもそも企画に賛同した支援者は、企画を支援するお金を出しているのであって、その支援金の一部がクラウドファンディングの運営会社に流れることを認識しているのだろうか?上記ツイートをした人は以下のようなツイートもしている。
「1万円お金を出したら1万円が相手に届くと思ってはいけない」
「クラウドファンディングで1万円お金を出したら、1万円が相手に届くと思ってはいけないんだってことは、今回再確認した」
利用料は利用した人が支払う性格のお金で、システムを利用して集めた支援金とは性格が異なるはずだが、クラウドファンディングの運営会社は支援金から利用料を控除した額を企画者に支払っているようだ。そのことを支援者にしっかり告知しているのだろうか? 少なくとも上記ツイートをした人には十分な認識がなく、報告書を見て複雑な思いを抱いたのだと思われる。そこで、永寿総合病院を応援する会が利用したクラウドファンディングを支援者の立場で利用してみたところ、登録から寄付に至る間に、支援をしたお金から利用料を運営会社が控除することを告知したページはなく、また、登録にあたって利用規約への同意も求められなかった。さらに「特定商取引法に基づく表示」では「支援者が本サービスの利用に際して当社に対して負担する利用料等はありません」と表示されていた。
一方、利用規約では「支援金を引き渡す際にクラウドファンディング実施手数料(オプションサービス料が発生する場合は当該オプションサービス料を含みます。)を控除する方法により、実行者からその支払いを受けることができるものとします」と運営会社が利用料を得る方法について記載している。なので、手数料を控除した支援金が企画者に支払われることは織り込み済みとの理屈は成り立つ。しかし、善意で支援をしようとする支援者に対する対応としていかがなものか?支援金の拠出に際し、支援金からシステム利用料が控除されて企画者にお金が渡ることを支援者に対して明確に告知するべきではないか?
(編集部)